【ファンタジーエンディング】チェンソーマン:Reze編
-藤本 タツキ夢のファンタジー小説:マキマとデンジの架空の楽園
第3章
新幹線の空白
新幹線のぞみ号の車内は、高級レザーの清潔な香りとエアコンのフィルターの香りが混ざり合った空気で満たされていた。窓の外の景色は時速300キロでぼやけ、街も畑も電柱も、すべてがぼんやりとした色の塊と化していた。
窓際の席に座り、非現実的な柔らかな青いクッションに深く体を沈めていた。窓の外の景色と同じように、彼の心も高速処理の末に「空白」の状態になっていた。
「デンジ君、何考えてるの?」
デンジのすぐそばに座った。デンジの太ももから伝わるかすかな温もりを感じるほどだった。今日は柔らかな淡い色のトレンチコートを羽織り、豪華な駅弁を優雅に開けていた。弁当の具材は透き通っていて、イクラはルビーのように輝き、和牛の脂は芸術作品のように美しく散りばめられていた。
「ふふ、何でもないですよ、マキマさん!」デンジ振り返り、いつもの歯のない、間抜けな笑みを浮かべた。マキマから渡された弁当を受け取ると、外見を気にせずむさぼり始めた。「まるで夢みたいだ。旅行だ!しかもマキマさんと!前世で銀河を救ったんだ!」
「本当?じゃあデンジくんもっと食べた方がいいよ。痩せすぎだよ。食べ足りないと私をちゃんと守れないよ」マキマはバッグからほんのりと香りのついたハンカチを取り出し、デンジの唇についたソースを優しく拭った。
その瞬間、デンジの心臓は高鳴った。それは彼がずっと夢見てきた治療だった。必要とされ、大切にされ、愛されること。
しかし不思議なことに、その激しい鼓動の奥底で、ぞっとするような感覚が静かに広がっていた。まるで、細かく調整されたギアが全速力で回転する中、小さくて硬い砂粒が挟まっているかのようだった。彼が最も「幸せ」な瞬間を感じるたびに、その砂粒が神経を擦り、何かが欠けていることを思い出させた。
デンジ窓の外を振り返った。一瞬、網膜に残像が浮かんだ。袖なしのベストを着て、腕に包帯を巻いた少女が、雨の中、一人で立っている。彼女の唇は、まるでデンジの名前を呼んでいるかのように動いていた。
「デンジくん、逃げようよ」
その言葉はまるで雷に打たれたようにデンジを襲った。デンジの手が激しく動き、弁当箱の中のイクラが地面に転がった。
「デンジくん?」マキマの声はまだ優しかったが、彼女の淡い黄色の瞳は底なしの渦のように彼を見つめていた。
「あ…すみません、マキマさん、手が滑ってしまいました!」デンジ慌ててかがんで拾おうとしたが、心臓が喉から飛び出しそうなほど激しく鼓動していた。
彼は恐怖を感じ始めた。マキマへの恐怖ではなく、繰り返される記憶への恐怖。あの少女は誰なのか?
なぜ彼女のことを考えるだけで、胸が張り裂けるような痛みが走るのか? 「レイ…… 」舌は本能的にその音節を発しようとしたが、その言葉が形を成そうとした瞬間、まるで細い鋼鉄の針が意識の核心を貫いたかのように、鋭い痛みが大脳皮質を駆け巡った。
「デンジくん、今駅で見た景色のこと考えてる?」マキマは手を伸ばし、冷たい指で彼の乱れた金髪を優しく撫でた。「そんな無意味な音は、あなたの幸せを邪魔するだけよ。私を見て、考えて…あなたが望むものはすべてあげるわ。」
彼女の声は、まるで魔法のような、催眠術のような周波数を帯びていた。淀は彼女を見上げると、重なり合う瞳孔が彼の目の前で開き、徐々に視界全体を埋め尽くした。その瞳には、窓の外の景色も、雨の中の少女も、ゴミ捨て場で食べ物をあさっていた過去の自分さえも見えなかった。
「いや……意味のない音だ」デンジ独り言を言いながら、だんだん目の焦点がぼけてきた。
心の砂粒はマキマの優しさによって砕かれ、粉々になり、やがて消え去った。あの「違和感」は無理やり押し潰され、温かい水に浸かっているような、偽りの安らぎに取って代わられた。
「マキマさん、お腹いっぱいです」ヨドは弁当箱を置き、おとなしい猫のようにマキマの肩に頭を乗せた。「眠いんです」
「眠いなら寝なさいよ、デンジくん。起きたらゴールしてるよ。」
マキマは窓の外を見つめ、かすかな笑みを唇に浮かべた。ガラスの反射に、デンジの顔がぼんやりと映った。まるで新幹線の高速走行に魂が風に消えていくかのようだった。
新幹線が滑らかに揺れる中、デンジ深い眠りに落ちた。夢の中で一輪の花が咲いているのを見たが、掴もうと手を伸ばした瞬間、花は燃え盛る炎へと変わり、灰一つ残らなかった。
その傍らで、赤毛の支配者は、愛する収集品を見つめる誰かの視線の下、自らの手で織り成したこの殺人、彼女自身が仕組んだ「幸福」という殺人を静かに守っていた。

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